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コラム
完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #9 小野 一光 2020/06/02 「どうやら新たな被害者がいるらしい……」 2002年3月29日、松永太(逮捕時40)と緒方純子(逮捕時40)が監禁致傷罪(逮捕・監禁致死傷罪)で起訴されたのと時を同じくして、そうした話が一部の記者の間で持ち上がった。 高窓から飛び降りて重症を負った女性 それは県警担当記者が、松永と緒方の再逮捕について捜査関係者に取材するなかで出てきた。内容は、ふたりと関係のある女性について、同年3月15日に福岡県警小倉北署が、北九州市八幡東区の病院に入院歴の照会を行ったというもの。その女性は1997年3月中旬に「ベランダから落ちた」として救急搬送されていた。 この情報が出る前は、次に考えられる松永と緒方の処遇について、保護された双子の男児の母親である田岡真由美さん(仮名、当時37)への、詐欺容疑での再逮捕が有力視されていた。しかし、彼女の供述に変遷が多いことを理由に、検察が立件に難色を示しており、以前よりもトーンダウンしていた。 やがて、この「新たな被害者」が、北九州市小倉南区のアパートから逃げ出した原武裕子さん(仮名、当時41)であることが判明する。とはいえ、彼女が肺挫傷などの重傷を負って、約4カ月間の入院をしていた事実まではごく一部のメディアが掴んでいたものの、具体的にどのような被害に遭ったのかという情報は、どこも得ることができなかった。 そんななか捜査に急展開が生じる。4月4日に福岡県警が、松永と緒方を原武裕子さんに対する監禁致傷容疑で再逮捕したのだ。 『朝日新聞』2002年4月5日付朝刊より その内容は、〈両容疑者は共謀し、96年12月末ごろから97年3月中旬ごろまでの間、当時35歳の独身女性が借りていた(北九州)市内のアパート2階にこの女性を監禁。 電気コードに金属製クリップを付けた道具で体に通電するなどの暴行を連日のように繰り返し、命の危険を感じた女性が夜、すきをみて高窓から飛び降りた際、腰の骨が折れるなど約4カ月の重傷を負わせた疑い〉(2002年4月5日付『朝日新聞』朝刊) というものだった。 「メディアは被害者の女性を割り出さないように」 再逮捕から間もない4日の夕方に、捜査幹部によるレク(「レクチャー」を指す用語)が行われた。その概要を抜粋すると以下の通りだ。 ・松永は弁録(弁解録取書)で「黙秘します。署名押印は拒否します」と言い、緒方は「私はしていません。名前も言ってないので署名、押印は拒否します」と言っている。 ・41歳の被害者女性については、松永が結婚しようと接近。その際に松永は京都大学卒のエリートだと称していた。 ・被害女性は、逮捕事実当時は35歳。 ・犯行場所は現在別の人が入居しており、ガサ(家宅捜索)はうっていない。 ・女性は脱出して腰の骨を折り、側溝を這いつくばるようにして逃げた。 ・電気コードはすでに押収しているようだ。 ・被害女性に松永は「ミヤザキ」、緒方は「モリ」を名乗っていた。 ・(各メディアは)被害者の女性を割り出さないように。被害者は両容疑者の写真を見せたら震え上がり、まだ恐怖心を非常に持っている。 ※写真はイメージです ©iStock.com 再逮捕前日も二転三転……急転直下の再逮捕 今回の再逮捕について、私が「急展開」との言葉を使ったのには訳がある。じつはこの再逮捕の決定は、捜査本部内でもごく一部の限られた者にしか知らされずに、急転直下でなされたものだったのだ。 再逮捕前日の4月3日、ある捜査員は福岡県警担当記者の取材に次のように語っている。 「捜査本部の雰囲気は変わりない。起訴したことで一段落ついた。焦って足元をすくわれるようなことは、したくないということだろう」 そして早期の再逮捕の可能性について問われ、次のように答えている。 「再逮捕については、特捜幹部の間で二転三転しているようだ。もうギリギリまで何(の容疑)でやるのか捜査員レベルではわからない。急転直下もあり得るし、じっくり1カ月、2カ月後にでも、ポンと再逮捕ということもある」 だがその発言の翌日に、いきなり再逮捕という展開になったのである。当日4日の夜になると、なぜ捜査本部が急きょ再逮捕に踏み切ったのか、その真相が漏れ伝わってきた。これもまた捜査員の言葉だ。 「今日、署に出ると雰囲気が違い、再逮捕をやるという。昨日までは再逮捕はまだ先となっていたのに、なんでいきなり今日なんだと驚いたら、どうやら今日、被害者の女性から『被害届を取り下げる』と言ってきたらしい。この女性の松永と緒方に対する恐怖心は半端じゃなくて、本当に震えている。そこで捜査本部は慌てて再逮捕することにしたんだ」 いまだ立件されていない“事件”との類似性 じつはこの数日前から、裕子さんの存在を嗅ぎつけた一部の記者が、彼女の自宅マンションを訪ねていた。その結果、脅えた裕子さんが捜査員に連絡を入れ、関わりを持ちたくないことを訴え出たのだ。そこで焦った捜査本部が予定を早めて動いたというのが、急な再逮捕の背景にあったのである。 この再逮捕を報じる新聞記事では、一部の社が電気コードを使用した通電による暴行と、支配下に置いて監禁していた犯行内容を取り上げ、いまだに立件されていない“事件”との類似性について触れていた。それは、監禁致傷罪の被害者である少女・広田清美さん(仮名、当時17)が供述しているという、彼女の父・広田由紀夫さん(仮名)への殺害、死体遺棄疑惑についてだ。 北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図 またほかにも、前述の田岡真由美さんと同じく、松永らが裕子さんから結婚準備を口実に、数百万円の現金をだまし取っていたとして、詐欺容疑を視野に捜査をしていると報じる記事もあった。これらはいずれも、捜査本部による再々逮捕を念頭に置いた“布石”ともいえるものである。 情報を漏らした“犯人”探しも同時に進行 こうしてみるとわかる通り、メディアは「先に先に」と捜査の流れを掴もうとし、一方で捜査本部はメディアに情報が漏れることで、捜査が“潰れ”てしまうことを警戒していた。そのため、捜査幹部はメディアに情報を流した捜査本部内の“犯人”を捜すため、あえて偽情報を流すなどの方法も採っていたようだ。 しばらく経って判明したことだが、再逮捕当日の捜査幹部によるレクのなかで、すでに記述してある通り、裕子さんに対して松永は「ミヤザキ」、緒方は「モリ」を名乗っていたとの話が出てくる。その話を受けて、数社が翌5日の記事にはこの通りの名前を掲載した。だが、実際のところ松永は「村上博幸」を、彼の実姉と紹介された緒方は「森田」を名乗っていた。そのことを知っているのはごく一部の捜査員に限られるため、レクの場で疑問を呈したり、本来の名前がどこかの媒体で出てくれば、リーク元が絞られるということだったのである。捜査幹部が「ミヤザキ」、「モリ」との情報を流したことを後に聞いた捜査員は口にしている。 「それはわざとガセ(偽物)を流してるんだろう。情報漏れを探るためじゃないか」 当初は、そこまで捜査幹部が神経質になるほどに、事件の成立が危ぶまれる、“薄氷を履むが如し”の捜査だったことがわかるエピソードだ。 こうした情報漏れに神経を尖らせる捜査本部との攻防を繰り返すのと並行して、各メディアは松永と緒方の過去、さらにはすでに殺害されている可能性が高い、広田由紀夫さんとの繋がりについての取材を進めていた。そこで浮かび上がってきた情報については、私自身の取材の結果も含め、改めて取り上げる。 再逮捕は「詐欺容疑」、再々逮捕は……? 逮捕から1カ月を経た4月7日になっても、松永と緒方の様子に変化はなかった。捜査本部はすでに長期戦となることを予期しており、再々逮捕の容疑としては、4日の再逮捕の被害者である裕子さんに対する詐欺容疑が有力とされた。ある捜査員は県警担当記者に対して語っている。 「詐欺容疑は問題なさそうだ。(監禁致傷とは)容疑がまったく異なるし、暴行や脅迫容疑だったらダメかもしれないが、詐欺だからね。被害額は最終的に200万円くらいまで裏付けできそうだ。女性(裕子さん)が松永と出会って、離婚して、監禁虐待される前までにわたって、結婚準備金名目で騙し取られたということ」 ただし、勾留期限の“満期”が迫る4月20日を過ぎた時点で、ふたりの再々逮捕については、4日の再逮捕容疑についての起訴よりも後という情報が流れた。さらに、その直後にはゴールデンウイークが控えているため、再々逮捕は早くともゴールデンウイークが明けてからになる見通しであるとされた。 ©iStock.com 4月25日、監禁致傷で起訴 松永と緒方が起訴されたのは4月25日のこと。起訴状に書かれていた公訴事実についての文面は以下の通りだ。 〈被告人両名は、原武裕子(当時36歳)を監禁しようと企て、共謀の上、平成8年12月30日ころ、北九州市小倉南区××所在のアパート××号室において、同女をして同室内四畳半和室に入室させ、その出入口扉に南京錠で施錠した上、引き続き、同女に対し、同和室内での起居を強いるとともに、以後連日のように、同和室等において、電気コードの電線に装着した金属製クリップで同女の腕等を挟むなどし、差込プラグをコンセントに差し込んで同女の身体に通電させ、「逃げようとしたら捕まえて電気を通す。」などと申し向け、同8年12月30日ころから同9年3月16日午前3時ころまでの間、上記一連の暴行及び脅迫等により、同女が上記××号室から脱出することを著しく困難にして同女を不法に監禁し、その際、同日時ころ、同和室窓から室外に飛び降りて逃走しようとした同女をして、その腰部及び背部等を地面に強打させ、よって、同女に対し、入院加療約133日間を要する第1腰椎圧迫骨折及び左肺挫傷等の傷害を負わせたものである。 罪名及び罰条 監禁致傷 刑法第2
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条、第220条、第60条〉 形式的な文書である起訴状の文面だが、深夜3時に窓から飛び降り、腰を骨折するなどの重傷を負いながらも命からがら逃げ出した女性の、切迫した様子が浮かび上がる。 「お父さんの他にも、もう一人殺されている」 異常すぎる事件は“氷山の一角”だった 完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #10 小野 一光 2020/06/02 2002年5月6日、『読売新聞』(西部本社版)が“独自”の記事を掲載した。 〈少女監禁被告のマンションを父親死亡現場と断定…福岡県警〉との見出しが付けられたその記事は、捜査本部が北九州市小倉北区の『片野マンション』(仮名)を、少女・広田清美さん(仮名)の父・広田由紀夫さん(仮名)が死亡した現場だと断定。現場保存を図るために借り上げていることが5日にわかったというものだ。 『読売新聞』2002年5月6日付朝刊より 記事には注目すべき記述が 同記事では〈賃貸という異例の措置〉との前置きをしたうえで、次のように解説する。 〈〔1〕捜索差押許可状の有効期間(原則として7日)は立入禁止措置で現場保存できるが、捜査には長期間を要する〔2〕許可状の有効期間経過後、賃貸に出された場合、新たな入居者によって現場が変更され、貴重な証拠資料が失われる恐れがある――などを考慮、事件の立件に向け、家賃を支払うことにした。家賃は月額6万5000円で、「捜査活動費」の名目で支出されている〉 このことは、由紀夫さんの死亡について、捜査本部が積極的に捜査していることを示している。だが、私が注目したのは同記事内にあるこのような記述だった。 〈また、少女は、緒方被告の父親(65)、母親(63)、妹(37)、妹の夫(43)らもこの一室で暮らしていたことがあると話しており、「母親はある日、口から何かを吐いて倒れ、そのまま動かなくなった」とも証言している〉 「おばあさんもいなくなった」 じつは緒方の母の死については、3月のうちに『週刊文春』だけが報じていた。それは以下の内容である。 〈少女の事情聴取は現在、婦人警官が保護先の児童相談所で行っているが、落ちつきを取戻しつつあるA子さん(少女)は、実は「第二の殺人」についても証言を始めている。 「お父さんの他にも、もう一人殺されている」 供述によると、少女が
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生の頃、「モリ(緒方)のお母さん」と二人に紹介されたおばあさんとある時期、一緒に××号室で暮しており、「おばあさんも殺され、いなくなった」という〉(『週刊文春』2002年3月28日号) 『週刊文春』2002年3月28日号より ©︎文藝春秋 だが、その衝撃的な内容についての続報はなく、複数の福岡県警担当記者に話を聞いても、捜査員からの有力な情報はないとして、いつしか立ち消えになっていた。 そこにまた改めて緒方の母の死をうかがわせる記事が出てきたのである。さらに同じ日の読売紙面には〈緒方被告の親族6人が多額の借金抱え不明〉との見出しがついた記事も掲載されており、緒方の親族6人が少なくとも3年間にわたって消息を絶っていることに触れている。それは先の記事での母の死が、氷山の一角に過ぎないことを意味していた。 計7人にも及ぶ大量死の疑い この6人とは、前述の4人に加えて〈緒方の妹夫婦の長女(14)と長男(9)〉のこと。同記事には彼ら6人について、〈生死にかかわる何らかの事件に巻き込まれている可能性もあるとみて、福岡県警の捜査本部は所在確認を進めている〉とある。なお、同記事中の全員の年齢については、この時点で生存していた場合のものであることを付記しておく。 北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図 ここにきて、由紀夫さんに加えて緒方の親族6人という、計7人にも及ぶ大量死の疑いがあることを暗示する記事が出てきたことに、驚きを禁じ得なかった。 この記事が出た日の夜、捜査幹部は夜回りの記者に対して、次のように口にしている。 「緒方被告の親族6人不明の話は、みなさん昔から知っていた通り。読売がなぜあんなに大きく書いたのかは知りません。これに絡む事件化の話は、私の耳には入っていません」 素直に受け取ると否定しているように聞こえるかもしれないが、役人とのやり取りで相手が「私は聞いていない」や「私は承知していない」と言う場合、往々にして取り上げた出来事が存在することを意味する。ただし、現実がそうだとしても、言質が取れたということにはならない。 緒方の妹の長女・花奈ちゃん殺害容疑で家宅捜索 メディアの事前の見立てでは、再々逮捕はゴールデンウイーク明けということだったが、5月6日を過ぎてもそうした兆候はなかった。一方で捜査本部は先の『読売新聞』の記事を裏付けるような捜査の動きを見せる。5月9日に『片野マンション』を改めて家宅捜索したのだ。しかもその際の令状は、緒方の妹の長女・緒方花奈ちゃん(仮名)殺害容疑で取られたものだった。 今回の家宅捜索では捜査員の他に、住宅設備業者や北九州市水道局職員など総勢約50名が現場マンションに入り、数日をかけて浴室のタイルや配管、沈殿槽などを切断して押収している。 捜査幹部によれば、「(この家宅捜索は)基本的には保護されている少女の話がベースにあり、義務教育時期の子供の生存確認ができない異常性を加味して捜索令状が取れた」とのことだった。また、失踪している緒方家の6人については「親族から捜索願が出されており、いずれも死亡確認はできていない」という説明に止まった。 写真はイメージ ©iStock.com ちなみに別の捜査員は、保護されている清美さんの記憶力について「驚異的」と評したうえで、「少女(清美さん)が死を目撃しているのは父親と緒方の姪の花奈ちゃん。いずれも同じ手口で殺害され、遺体を捨てられたと供述している。緒方の甥については、電気コードでの虐待は目撃しているものの、その死は見届けていない。突然消えたそうだ」と語っている。 再々逮捕は詐欺・強盗容疑 結果的に家宅捜索は5月19日までの10日間にわたって続けられるのだが、その最中である5月16日に、松永と緒方への再々逮捕が執行された。 逮捕容疑は原武裕子さん(仮名)への詐欺・強盗。逮捕事実については、詐欺容疑が松永と緒方が結婚話などを餌に、カネを騙し取ろうと共謀のうえ、1996年7月下旬から9月下旬にかけて、裕子さんから現金合計約350万円を騙し取ったというもの。その際、裕子さんに対して松永が弟、緒方が姉を装い、「結婚するためにはカネがいる」(松永)、「自分たちは広島に土地を持っているので、心配しなくてもカネは返す」(緒方)と嘘を言って信用させ、現金を用意させていた。また松永は「将来、小説家になるために、まだカネが要る」とも話していた。 続く強盗容疑については、北九州市小倉南区のアパートで裕子さんに対し、電気コードを使用して身体に通電させ、激しいショック状態を起こさせる暴行を繰り返して反抗を抑圧したうえ、1996年12月末頃から97年3月中旬までの間、前後7回にわたって現金合計約200万円を強取したというものである。 この再々逮捕時の弁解録取書については、松永、緒方はともに署名、押印をせず、松永は「黙秘します」、緒方は「なにも言いたくありません」との反応だったことが明らかになった。 事件について伝える『週刊文春』2002年3月28日号の記事 ©︎文藝春秋 なお、これは後にわかったことだが、「詐欺・強盗」容疑は当初からの予定ではなく、途中で変更されたものだった。福岡県警担当記者は言う。 「最初は詐欺と恐喝容疑の予定で捜査を進めていたそうですが、(捜査本部の)班長が『どうしても松永と緒方のふたりを許せない』と言い出して、『恐喝ではなく(より罪の重い)強盗で立件しよう』となったんです。その話に対して福岡地検もまんざらではなかったようで、捜査内容を詰めに詰めて、強盗容疑での立件になりました。再々逮捕の時期が遅くなったのもこのことが理由で、地検との詰めの作業に時間がかかったからだと聞いています」 さらにこの再々逮捕に絡んで、松永が裕子さんに対して「いまは
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の講師をしていて月収が100万円ある。将来、小説家になるため家にこもるので、当面の生活費が要る」とカネを騙し取っていたことがわかった。 「今回ある程度うたわせないと」「最初から殺人でガンガンいく」 再々逮捕が執行された時点で、すでに2件の監禁致傷罪で起訴されている松永と緒方の初公判が、福岡地裁小倉支部で6月3日に開かれることが決まっていた。ふたりの身柄は起訴後も松永が小倉北署、緒方が門司署にあったが、それにも限度があり、いずれは拘置所に移さなければならない。捜査本部は再々逮捕による勾留で署内の留置場に留め置くことができるうちに、彼らから殺人についての自供を引き出したいと考えていたようだ。県警担当記者の夜回りに、捜査員は次のように答えている。 「(勾留期限の)20日間がいよいよヤマ場。取調官もかなり疲れているが、上から相当のプレッシャーを受けているようだ。もう、(取り調べは)最初から殺人でガンガンいくことになると思う。地検サイドから(殺人の立件については)『8月までは待つ』と期限が決められているし、今回の逮捕である程度までうたわせないと、次の逮捕は本当に殺人でいくしかないだろうから……。松永は雑談には応じているし、精神的にも安定している。そういう点で、(捜査)本部はやっぱり落ちるとしたら緒方の方だと見ている。緒方は本当に完黙で、雑談にもまったく応じていない。かなり緊張しているようだから、その糸でもぷっつり切れたら話し出すんじゃないか、と」 ©iStock.com 5月
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日、捜査本部は福岡県瀬高町にある、松永の両親が住む家を家宅捜索した。捜索の容疑は再々逮捕と同じ「詐欺・強盗」で、松永の両親は事件発覚後、約1カ月間家から離れていたが、4月下旬に戻ってきていた。 約10名による捜索の結果、強盗容疑で使用されたと見られる電気コード、結婚詐欺のマニュアル本、松永の通帳やその他関係書類などが押収されている。 初公判の期日が迫るなか、ふたりの取り調べに目立った進展は見られなかった。捜査員が語るのは、次のわずかな変化のみである。 「松永はかなりビクビクしているようだ。緒方がなにか喋っていないか、かなり気にしている。一方の緒方は依然として完黙。ただ、けっこう疲労の色が見え始めていると聞く」 ◆ ◆ ◆ ・・・
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